要介護者の口腔ケアの方法と心がけるべきこと
介護士の働き方・介助のコツ
歯磨きをはじめとした口腔ケアは、要介護者になると自分で行うことが難しくなってしまいます。特に高齢の場合は年齢と共に介助が必要になってくるため、介護者は正しく適切な口腔ケアを行う必要があるのです。口腔ケアの必要性や具体的な方法、心構えなどについて説明します。
口腔ケアとは？ 利用者の口腔ケアの目的
まず口腔ケアとは、口の中を清潔に保つために歯磨きなどを行うことです。口腔を綺麗にすることで、全身の健康維持にも役立つでしょう。高齢になると体力の衰えなどから自分で口腔ケアをすることが難しくなるため、介護施設では介護者が手伝うことで虫歯や歯周病を予防しています。
そして口腔ケアは、口内の雑菌が原因となり引き起こされる誤嚥性肺炎や脳血管疾患、感染性心内膜炎などの予防にもなります。高齢者の口腔内は年齢とともに唾液の量が減るなどの変化があり、細菌が繁殖しやすい状態にあるのです。また、口腔機能が回復することにより、噛む・飲みこむ・味を楽しむ・発音発声がしやすくなるなどの改善も期待できるようになります。
口腔ケアの方法
介護が必要な人に対して口腔ケアを行う際には、どういった手順で行われるのでしょう。口腔ケアには、いくつか注意しておくべきポイントがあります。口腔ケアの方法について、注意点も交えて詳しく解説します。
利用者の歯の磨き方
歯磨きをするときは、歯の表面がツルツルになることを目指して磨きましょう。特に歯と歯の間や歯と歯肉の境目、歯根が露出している部分は磨き残しができやすいため、注意してケアします。歯ブラシは毛先をきちんとあてる・軽い力で磨く・小刻みに磨くことに気をつけて歯を磨きましょう。歯の表面だけでなく粘膜や舌まで磨くと、細菌の繁殖予防に役立ちます。
歯磨き後のうがいの方法
歯磨きで落とした汚れを外へ出すためにも、必ずうがいをします。この時、口に水を含み、片方の頬を膨らませるようにしてからもう一方の頬でも同じようにしましょう。この時使う水に、うがい薬を加えておくとより殺菌効果が高まりますが、飲みこむ可能性がある利用者には控えましょう。また自分でうがいをすることが難しければ、ブラシ・スポンジ・指などにガーゼを巻きつけて介護者が利用者の口内の汚れを取り除きましょう。
入れ歯の洗い方
入れ歯を洗う時は口腔内に使う歯ブラシとは別の、義歯用歯ブラシを使うことがおすすめです。これは義歯用歯ブラシの方がより綺麗に磨きやすく耐久性があるからです。また入れ歯を洗う時に使う洗剤は歯磨き粉とは違って研磨剤の入っていない中性洗剤を使います。
口腔ケアを介助するときのポイント
介助がどのくらい必要かは一人一人違ってくるため、可能な範囲は自分で行ってもらうなどしてそれぞれに合った対応をしましょう。介助する時に気をつけたいポイントは以下の通りです。
できるかぎり毎食後に口腔ケアを行う
毎食後口腔ケアをすることで、細菌の多い歯垢と食べ物の糖質を除去し虫歯などを防ぎます。中には毎食後の歯磨きは不要との説もありますが、これはあくまで十分な唾液の分泌がある場合です。唾液分泌量の減少している高齢の利用者には、毎食後の口腔ケアがおすすめです。もし食後に何もせず放置すると、歯垢の細菌が食べ物の糖質から酸を作り、歯を溶かして虫歯になっていく可能性があります。
利用者でもできる範囲は利用者自身にやってもらう
利用者の自立にもつながるため、できることは利用者自身でケアを行ってもらうことが大切です。最低限できないことをサポートしてあげるようにしましょう。できる範囲は一人一人違うことから、介護者同士で情報の共有をして適切なサポート内容を把握しておきましょう。
口腔ケア中に歯に異常がないか観察する
できることは利用者本人に行ってもらいますが、歯に異常がないかの確認はしっかりと介護者がしておきましょう。チェックするポイントは、虫歯の有無・噛み合わせができているか・歯茎や舌、粘膜の色・口臭などです。できるだけ毎回口腔ケアの後で確認をしておくようにすると変化に気づきやすく、異常があったとしても早期治療を促せます。
なるべくすみやかに終わらせる
介護者が利用者に代わって口腔ケアをする場合、できるだけ短時間で終わらせましょう。高齢者の口腔内は、乾燥しがちで違和感を生じやすくなっているためです。また他人に口の中を長い間見られることを嫌がる利用者もいることから、すみやかな口腔ケアを心がけましょう。
要介護者の方は、高齢になるにつれて自力での口腔ケアが難しくなります。しかし口腔内は乾燥しやすく虫歯や歯周病にもかかる可能性があり、口腔ケアのサポートを積極的に行ってトラブルを防ぐ必要があるのです。しかし、だからといって全て行っては利用者の自立を妨げてしまいますから、できる範囲は自分で行ってもらい、介護者はサポートや歯磨き後のチェックをきちんとすることがおすすめです。清潔な口腔内が保たれることで、病気予防や生活の質アップにもつながるため継続して行いましょう。
